「イブグリース(一般名:レブリキズマブ)」はアトピー性皮膚炎の保険適用薬(皮下注射)で、2024年5月31日に日本イーライリリー株式会社より発売された最新の生物学的製剤です。
これまでステロイドやプロトピック軟膏を使用しても十分な効果が得られなかった患者様には試す価値のある治療薬です。
本記事ではイブグリースの効果や副作用、デュピクセントとの違いなど気になる詳細をご説明していきます。
イブグリース(アトピー性皮膚炎治療薬)とは?
イブグリースは、外用薬などの既存の治療で効果が不十分な中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者に対して使用されるデュピクセントと同様の生物学的製剤です。
イブグリースは、アトピー性皮膚炎の原因となる炎症やかゆみに関与する主要な物質「IL-13(サイトカイン)」の働きを抑制することで症状を改善します。
イブグリースのメカニズムとしては、IL-13を狙い撃ちしてIL-13の働きをピンポイントに抑えるため、アトピー性皮膚炎の症状の本質を改善させることもできると考えられます。

「IL-13」についてもっと詳しく!
アトピー性皮膚炎の原因とされているIL-13は、かゆみを引き起こしたり、 皮膚のバリアを弱めたりする作用があります。
IL-13によって引き起こされたかゆみが原因で皮膚を掻いてしまうと、 皮膚のバリアがいっそう弱まり、外からの刺激に敏感になります。
すると、IL-13がさらに作られるという悪循環ができ、アトピー性皮膚炎が悪化・持続すると考えられています。
イブグリースはこのIL-13に結合してその働きを弱め、体の内側から悪循環を断ち切ります。
イブグリースの治療対象の方
- 【成人】中等症から重症のアトピー性皮膚炎の方
- 【小児】12歳以上かつ体重40kg以上の中等症から重症のアトピー性皮膚炎の方
原則、ステロイド外用剤やプロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)などの抗炎症外用剤を一定期間投与しても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ方が対象となります。
※投与開始後も、原則として外用剤は継続していただきます。
イブグリースとデュピクセントの違い(比較)


イブグリース | デュピクセント | |
---|---|---|
標的となる物質(サイトカイン) | IL-13 | IL-4、IL-13 |
治療間隔 | 初回と2回目は2本 その後は2週間隔で1本 ※維持期は4週間隔も可 | 【15歳以上に投与する場合】 初回は300mg製剤2本 その後は2週間隔で300mg製剤1本 ※15歳未満は体重により投与量・投与間隔が異なります |
自己注射 | × | 〇 |
小児への治療 | 12歳以上かつ体重40kg以上 | 生後6ヶ月以上 |
イブグリースを用いたアトピー性皮膚炎治療の流れ
イブグリースの治療をご希望の方は、あらかじめ診察を受けていただき、当院医師が適応かどうかを判断いたします。
医師により適応があると判断され、ご本人が治療を決めていただいた場合には、当日もしくは次回来院日に当院でのイブグリース皮下注射が可能となります。
イブグリースは高額な治療になりますので、診察の際、医療費などに関する説明を聞いていただきます。
お配りするパンフレットには、具体的な医療費の助成制度も記載されておりますのでご参照ください。
イブグリースはお腹・太もも・上腕部のいずれかに皮下注射します。
初回:2本を皮下注射します。
2週間後:2本を投与します。
その後は、2週間隔で1本を投与します。
なお、患者様の状態に応じて4週間隔で1本投与することも可能です。

イブグリースは現在は自己注射は解禁されておりませんが、今後開始される予定です。自己注射が解禁された際には、2回ほど当院にて自己注射指導を行い、問題なく投与ができるかどうかを確認させていただいた後に治療を開始させていただきます。
イブグリースに関する詳しい情報が知りたい方は下記製造元のウェブサイトをご覧ください。
イブグリースの副作用・注意点
イブグリース治療の副作用
- 注射を刺した部位に赤み・痒み・腫れ(注射部位反応)が生じる場合があります。
- 数%の確率でアレルギー性結膜炎を引き起こす可能性があります。
重篤な過敏症(アナフィラキシー)
動悸・息苦しさ・吐き気・嘔吐・これまでとは違う発疹やかゆみなどの症状が出た場合には、すみやかに当院医師までご相談ください。アナフィラキシーは注射した翌日以降に起こる場合もございますのでご注意ください。
イブグリース治療の注意点
- 保険適用の治療薬ですが高額になりますので、医療費などの説明を受けていただいたうえで治療を開始するかどうか決定いただきます。
- イブグリース投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けてください。
治療を受けることが難しい方
- イブグリースに過敏症の既往がある方
- 寄生虫に感染している人
- イブグリースは、寄生虫感染に対する防御機能に関わっている可能性がある IL-13 の働きを抑えます。そのため、寄生虫に感染している人はこの薬を使用する前に寄生虫の感染に対する治療を行う必要があります。
- 妊婦または妊娠している可能性のある人
- 授乳中の人
イブグリースの料金
イブグリースは保険適用の治療薬ですが、高額な治療となります。
患者様の年齢や年収、加入している健康保険組合により負担額は異なりますが、医療費の助成制度を上手くご活用いただき治療にお役立てください。
治療前にお配りするパンフレットには、具体的な医療費の助成制度も詳しく記載されておりますのでぜひご参照ください。
また、茨城県に在住の18歳未満の方は医療福祉費支給制度(マル福)の利用が可能ですので、経済的負担も大幅に軽減できます。
詳しくは以下の茨城県HPをご確認ください。
>>医療福祉費支給制度(マル福)について
初回と2回目(2本) | 3回目以降(1本) | |
---|---|---|
薬剤原価 | ¥101,564 | ¥50,782 |
3割負担 | ¥30,469 | ¥15,235 |
2割負担 | ¥20,313 | ¥10,156 |
1割負担 | ¥10,156 | ¥5,078 |
※2025年2月現在のイブグリースの薬価をもとに計算しています。
イブグリースのよくある質問
イブグリースは12歳以上で体重40kg以上の方であれば治療可能です。ただし、基本的にはステロイド外用剤やプロトピック軟膏(タクロリムス軟膏)などの抗炎症外用剤を一定期間投与しても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ方が対象となります。
現在は自己注射(ご自身で皮下注射を行う場合)は解禁されておりませんが、今後解禁される予定です。
その際は改めて当院ホームページでお知らせいたします。
患者様の年齢や年収、加入している健康保険組合により異なりますが、2025年2月時点では保険3割負担の方で1本あたり15,235円です。(料金の詳細は上記参照)
患者様によって個人差はありますが、治療開始後数日から数週で効果を実感していただくケースが多いです。
患者様の状態に応じて2週間隔でそのまま治療を続けるか、4週間隔に変えるなどを効果を確認しながら検討します。
現時点では、イブグリース治療の明確な治療中止基準は定まっていないため、有害な副作用等によりイブグリース治療の継続が難しいと判断されるまでは治療の継続をおすすめいたします。また、治療効果の判定に関しては、治療開始後16週時点において、医師が効果が乏しいと判断した際には、イブグリース治療を中止することもあります。
イブグリース(アトピー性皮膚炎治療薬)まとめ
アトピー性皮膚炎治療薬の「イブグリース」についてご紹介いたしました。
以下に本記事の内容をまとめます。
- イブグリースとデュピクセントの違いは、薬剤の標的となる物質や治療適応年齢や投与間隔が異なります。
- イブグリースは12歳以上で体重40kg以上の方から適応となります。
- 副作用には注射をした部位の赤みや痒みの他、まれにアレルギー性結膜炎を引き起こす可能性があります。
- 個人差はありますが、治療開始後数日から数週で効果を感じられる場合が多いです。
当院のアトピー性皮膚炎治療には他にもナローバンドUVB治療(全身型)、エキシマライト(局所型)、デュピクセント(生物学的製剤)の他、経口JAK阻害薬のオルミエント、リンヴォック、サイバインコがあり、患者様お一人おひとりの症状やご要望によって様々な治療の選択肢をご提案できます。
治療をご希望の方はまずは当院の医師までご相談ください。